Tuesday, 12 March 2019

9 School grounds From Resting Elbows Nearly Prayer 2007


9 School grounds

9 校庭
2年の夏休みに入り、陸上部の練習が終わったあと、シューズをしまっている田所のところに、めずらしく村木が来た。図書委員会などで一緒になったときは、ときどき話したりするが、校庭で話をするなんてあまりない。
「田所君、立山市の夏祭って見た?」
「七月の終わりのやつ?見てない」
「今年見に行かない、ちょうど土曜日だし」
相当びっくりした。どうしてそういう選択になるのか、田所にはわからなかった。
「えつ?、オレなんかでいいの?」
「そんな人いないわ」
それはそうだ、オレがそんな人であるはずがない。
村木の髪が1年のときより少し長くなった。それを今日は後ろで無理に束ねている。
「花火がいいって、去年見た人がいってたの、来年はもうそんな気分にならないかもしれないし」
確かにそうかもしれない。
「花火は飛行場であげるらしいな」
「そう、立山通りだっけ、あの辺はすごい人だって」
「行ってみるか」
「いい?」
なんだかよくわからないけれど、それはそれでいい。一瞬金井に伝えようかとも思ったが、それはやめた。
夏の校庭が田所は好きだった。定時制が5時半から始まるため、全日制はそれまでに帰らなければならないことになっているが、なかなかそうはならなかった。事実田所は何回か自分の教室に忘れ物をしていて、コンコンと、定時制の授業中に入り口をノックして、自分の座席から忘れ物を持ってきたことがある。
そこへいくと校庭は自由だ。定時制の体育の授業がときどき始まることもあるが、夏だと広い校庭に6時過ぎまでいてもそれほどの違和感はない。
それに今は夏休みに入り、明かりがところどころしかまだついていないが、夏休み前の校庭や、秋の文化祭のころの校庭から、明かりのともった校舎を見るのは気持ちよかった。多くの若者がここに集っている、その活気がすばらしいものに思われた。

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