台所にかけられた版画から、冷えきった暗い室内に向かって、光の帯が音もなくのぼり、大輪の花火がゆらめきを残してつぎつぎに 開花してゆく。花火はガラスに映り、やがてガラスを超えて霧がながれる街路の上へとひろがってゆく。 暗く霧におおわれた空一杯に、今、花火が大きく開き、その下方を乗客も絶えた路面電車が音もなく過ぎて行く。 ―なぜこんなにさびしいのか。 ガルシン。ロシアの帝政末期を光芒のように生きて逝った魂。 「赤い花」は必死に、どうでもよい一輪の赤い花をもとめて、遂にそれを得る。 フセヴォロド・ミハイロヴィッチ・ガルシン、
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