Verse Recalled
Mountain Hut
by RI Kohr
拾遺詩篇
里行
小屋
ここを前におとずれたのはいつの日であったか
今は夏の終わりに近くかつては秋の終わりに
霧のような雨が降っていたその小さな小屋の
ストーブに手をかざし靴を乾かしていた
若かった私よ 若かったすべてのものたちよ
ああその日のような風景になりたいと
私はいつも希っていた
明るいほのおと温かいお茶と固いひとつの椅子と
それらがあれば それらが持続すれば
私の生のほとんどは多分満ちていたのだと
幾度となく考えていた
久しぶりにおとずれたここははなやかで
人々の声が行き交い外ではとうもろこしが売られ
遠い日の暗く沈んだ空もようを思うことは難かしい
私の心が今はなやいでいるという訳ではないが
かつての暗い風景はもしかしたら私自身なのかもしれず
しかしその中心にストーブが赤々ともえていたのが
限りなくなつかしい
愛する人よ
私はここから歩いて来たのです
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