Late spring trip
晩春の旅
五月二十二日奈良に行く。花畑が美しい。奈良国立博物館の浄土美術展をみる。仏像と浄土曼荼羅と来迎図。関西大学博物館学の実習で、小野勝年先生(Professor ONO)が指導しておられた。お話を一緒にきかせてもらい、講堂で講義もうかがう。帰りみち日吉館でおばちゃんの元気な姿に安心する。
翌二十三日朝、川崎先生 (Professor KAWASAKI)にお電話する。お願いして、比叡に御一緒させてもらう。先生をホテルにたずね、車が坂道になり、深い木立の中に入ってゆくと、先生は「この辺に来るとほっとするよ」といわれる。比叡ドライブウェイから山頂へ。窓外につつじの花が美しい。
山頂で展望台にのぼる。「京都が立体的にわかるから」と話される。そしてしゃくなげ園をみる。晩春の光の中。
横川にむかう。横川中堂で聖観音をみる。道元の像に先生は、「むしろ童顔だね」と。森閑とした木立を歩み、恵心院の庭をみる。ここは「平安のおもかげを残しているので」といわれ、石組みや谷をおもわせる起伏を教えていただく。四季講堂に至る。良源・源信のお話。
横川から奥比叡ドライブウェイを、琵琶湖にくだる。おだやかな湖面と緑の田園。朝用意した傘ももういらない。
坂本に着き、古くからあるおそばやさんでごちそうになる。先生がはじめておとずれた叡山のこと。伝教大師全集のこと。
先生に一日のお礼をのべ、日吉大社へ。のち、叡山駅までなだらかな坂をくだり、丁度入ってきた湖西線で京都に戻る。雑踏はもう夏をおもわせた。
会報 第15号 1983年1月1日
Bulletin No. 15. 1 January 1983
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