Tuesday, 16 November 2021

Winter comes as if grace arrives

 

Winter comes as if grace arrives

Winter comes as if grace arrives

 

 

恩寵のように冬が来る
Winter comes as if grace arrives

 
From Print 2012, Chapter 19

信号が変わる。

―むかしね。谷山豊TANIYAMA Yutakaって人がいたんだ。

Aは声をすこし大きくして言った。

―若くして亡くなった。婚約者もたしかまもなく亡くなった。彼とその友人が作った予想が、フェルマー予想Fermat Theoremを解くかぎになった。ワイルズWilesという人が解いてもう十年以上になる。それで谷山TANIYAMAの特集が雑誌に載ったことがあった。

Iはただ彼を見ている。

―そのときね、本屋で読みながら、すごくうらやましいとおもった。雑誌は買わなかったけど、買ってもしかたがないような気がしたから。自分にはそのときなにもなかったから。ただ、そんなふうに生きてみたい、死ぬことじゃないよ、一度生きるならそんなふうに生きたいとほんとうにおもった。それがたぶん自分には生涯できないとわかっていたから、よけいうらやましかったんだ。それがね、いまは谷山TANIYAMAのように生きている。彼のようにすごくもなんともないけど。おもいはまったく同じなんだ。

―すごいわね、ほんとうに。そんなにおもえるなんて。

書店が見えてきた。

ふたりに今、恩寵のように冬が来る。For the two, winter comes as if grace arrives.


Source: https://srfl-theory.webnode.com/tale.html 

Reference: The Complete Works of TANIYAMA Yutaka / 11 November 2012


                                        In late autumn, Tokyo


Read more: https://srfl-lab.webnode.com/products/winter-comes-as-if-grace-arrives-2012/

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